ミックマック観てきたよ



ジュネの新作です。
チラシに載ってる程度のネタバレありです。


あらすじ

ビデオ・レンタルショップの店員バジル(ダニー・ブーン)は、ある晩、発砲事件に巻き込まれ、命は助かったものの、頭に流れ弾が残ったまま、生きていくハメに。入院中に職も家も持ちモノもすべて失ったバジルに、温かい手を差し伸べてくれたのは、それぞれがとてもユニークな特技をもつ仲間たちだった。廃品にかこまれた工場のような家で、不思議な集団生活が始まった。心優しきバジルは、そんな疑似家族の暮らしにだんだんとなじんでいく。そんな折、バジルは自分の頭の中にある銃弾を作った会社と、30年前に父の命を奪った地雷を製造した会社を発見する。バジルは1人1芸を持った仲間たちと、この憎き兵器製造の二大企業を懲らしめる、スパイ大作戦さながらの“イタズラ”を決意する──。


大変面白かったです。映画自体には文句ありません。
でもチラシやらに並ぶ「平和」「幸せ」と言ったキーワードは、どう考えてもおかしい。

主人公たちのやっていることは「正義」ではないよね。
個人的な恨み。本人たちも正義のつもりでやってはいないと思う。 ましてや主人公以外の仲間は兵器製造会社になんのうらみもないのに、あそこまで陥れることができちゃうのは正直怖い。
ぼくはどんな理由、どんな手段であっても「私刑」は肯定できないよ。
しかもそもそも矛先がおかしい。 爆弾や銃弾に恨みがあるからといって兵器製造会社を攻撃するわけだけど、悪いのは彼らでなく、それを必要とする社会だし、さらにいえばその社会に属する僕たちなわけで。だから兵器製造会社の社長らだけが割を食うのは間違ってるよね。


でもいいんです。
そうゆう「人としての箍」の外れた、ちょっとおかしな連中を描いた話なんだから。ジュネはいままでもそういう「異形のモノ」をずっと慈しんで、描いてきたんだから。筋の通らない復讐だっていいんだよ。


いいんだけどさ、
この映画の彼らの所業を「平和」だと思う人が多いとしたら、ぼくはそれはとても恐ろしいことだと思う。憂慮かもしれないけど、少なくとも配給はそういうプロモーションでミスリードしてる。 主人公らの復讐を肯定できるひとは、条件さえ整えば「私刑」を楽しめてしまうひとなのかもと思うと、怖い。


この映画は「反戦」でも「平和」でも無いです。でもだからこそ面白いんだけどな、本当は。